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静岡地方裁判所沼津支部 昭和41年(ヨ)224号・昭41年(ヨ)194号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、昭和三七年暮から昭和三八年五月初旬にかけて、被申請人発行の株式の移動をめぐり、組合は中央斗争委員会を組織し、株式の集中、合併に反対し、経営の民主化を要求するいわゆる経営民主化斗争を展開し、組合はその間に解雇された一三名の解雇処分の撤回をはじめ従来から懸案となつていた諸要求を掲げて争議を継続し、その結果同年四月中旬から下旬にかけて二名の参議院議員の仲介を得て労使間の交渉が進められ、同月三〇日右紛争事項につき合意が成立し、右合意事項について同年五月七日協定書が作成された。その際交渉当事者である被申請人を代表して代表取締役社長笹野好男が組合を代表して組合長水谷清がそれぞれ立会人と共に右書面に署名捺印したこと。

二、右協定の最終案の成立した日は昭和三八年四月三〇日であるところ、同日組合は従来から組合の諸要求をまとめた協定書原案を作成して交渉にのぞみ、被申請人との話合いは組合側の作成した右協定書原案をもととし、これに加除修正を加える方法によつてなされたが、右原案の(三)には「労働協約事項」と題し一から五まで具体的事項を規定した後その六において「以上の他の労働協約については組合原案通りとする」と規定し、右五からまでの事項が労働協約であることを明示していること、この点について五・七協定書には(二)「労働協約事項」と題し、右原案とほぼ同様の記載の仕方がなされていること。

又右原案中の「(三)労働協約事項」の四には「従業員の人事(採用、昇格、昇給、異動、降格、教育)は事前に協議のうえ決定する」と規定され、その五には「従業員の解雇並びに賞罰については組合の同意のうえこれを行う」と記載され、右協定最終案にはこの四と五の内容を一括して「従業員の人事に関する基本的事項」とされたが五・七協定は右文言をそのまま受継ぎ(二)の一として同文言の規定をしたがその際右条項については特に議論はなく、右原案五の解雇並びに賞罰を右の「人事に関する基本的事項」から除外する旨の了解がなされたことはなかつたこと。

三、右協定締結後である昭和三八年五月三〇日および同年七月一二日には被申請人銀行熱海支店、昭和三九年三月には同下田支店、同年五月五日には同清水支店、同年一二月には同小田原支店、昭和四〇年四月には同浜松支店において行員が懲戒解雇されているが、右各処分においてはいずれも被申請人より組合に対し事前の通告があり協議がなされたこと。

四、しかるに昭和四〇年四月六日頃三島支店の職場委員をしていた一行員が窃盗犯人と誤認されて警察に留置された事件が起き、被申請人は組合に対し何らの事前協議をしないで右行員を懲戒処分に付したので、組合は直ちに被申請人に抗議し話し合つた結果、最終的には賞罰も五・七協定における事前協議事項であることを確認しあつたこと。

折柄昭和四〇年春季諸要求についての交渉が妥結し、その内容について同年五月二七日協定書が作成されたがその一〇に「賞罰について」は「五・七協定に基き事前協議決定する」と規定し、右確認事項を明文化し、同日組合を代表し、中央斗争委員長水谷清が被申請人を代表し代表取締役川井盛雄がそれぞれ右協定書に記名捺印をしたこと。

が疎明される。以上の疎明された事実を総合すると、いわゆる五・七協定、五・二七協定は労働協約であり、本件懲戒解雇を含む懲戒権の行使も右各協約において事前協議決定を要することと定められた「人事に関する基本的事項」もしくは「賞罰」に該当するものであることが疎明される<中略>

前記疎明事実によれば、五・七並びに五・二七協定における前記協議約款はいわゆる労働協約における人事に関する協議約款であつて、このような約款は本来使用者に属する企業経営権、人事権の行使に組合をして参加することを認めさせ、もつて使用者の恣意的権利行使を制限し労働条件その他労働者の待遇を維持又は改善することを狙いとするものであつて、いわゆる経営参加条項と解すべきであるが、解雇は労働契約関係の終了という労働者の待遇に関する最重要事項にかかわりをもつものであるから右条項の目的、趣旨に照し、同条項の要求する事前協議を履践しないでなされた懲戒解雇は単に債務不履行の責任を生じさせるにとどまらず、当該処分自体をも無効とするものが相当である。それであるから右見解と異る被申請人の主張は当裁判所においては採らないところである。<中略>

ところで右約款において要求する協議とは、労使双方誠意を以つて意見を交換検討して妥結点を見出すよう努力し、話し合うことを意味するものと解すべきであるから仮りに被申請人の主張する右事実が認められたとしても、右事実からは被申請人が単に一方的に警告を発した事実が疎明されるだけで到底事前協議がなされた事実は疎明されない。<後略>(野口仲治 島田稔 柄多貞介)

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